長岡弘樹の真骨頂は、精密な論理と人間の業が交錯する瞬間の鮮烈さにあります。二十周年を記念した本作は、短編ミステリーの魔術師が自選した珠玉の六編です。単なる謎解きではなく、事件の背後に潜む「切なる願い」を慈愛に満ちた筆致で掬い上げる様は、読者の心の深淵を容赦なく揺さぶります。
各話に漂うのは、運命と対峙する者たちの静謐で熱い葛藤です。研ぎ澄まされた伏線が導き出す真相は、驚きを超えて高潔な文学的感動へと昇華されます。短編という極限の形式の中で、人間の魂の震えを描き切る圧倒的な密度を、ぜひ全身で享受してください。