あらすじ
その“芝居”には、裏がある。
巧妙にはりめぐらされた伏線を一行たりとも見逃すな。
『教場』の著者が贈る、驚愕の連作短編ミステリ。
顔を売りたいはずの「斬られ役」の俳優は、なぜカメラに背を向けて倒れたのか。俳優のマネージャーが「わざと」自動車事故に遭ったのはなぜかーー。
演劇学校の講師であり、ベテラン俳優でもある南雲草介は、ドラマや映画の撮影現場で起こるさまざまな事件やトラブルを鮮やかに解決していく。だが、演技に潜む「罪」を見抜く南雲にも、ある秘密が隠されていた。
役者たちの「業」を描いた著者渾身の傑作ミステリ。
ISBN: 9784569903743ASIN: 4569903746
作品考察・見どころ
本作は、演技という偽りの背後に潜む真実を峻烈に暴く心理ミステリの白眉です。著者の冷徹な観察眼は、役者という他者を生きる者たちが抱える業や執念を鮮やかに結晶化させています。撮影現場の些細な違和感から深淵を覗き見せる筆致は、一行たりとも目が離せない緊張感に満ちており、読者の五感を鋭く研ぎ澄ませます。 探偵役の南雲が解き明かすのは、トリック以上に、心の淵に沈む愛憎のドラマです。虚構の中に隠された罪が露わになる瞬間、そこには芝居を凌駕する凄まじい生の実感が立ち現れます。表現者の孤独を残酷なまでに美しく切り取った本作は、日常の景色さえも一変させてしまうほどの魔力を秘めた逸品です。