あらすじ
名演技に潜む「罪」と「罰」--
ドラマや映画の撮影中、舞台の演技中に起こるさまざまな事件やトラブルを鮮やかに解決するベテラン俳優の南雲。--そこにはある秘密が隠されていた。
『教場』の著者が、芸能界に生きるものたちの‟業“を描いた連作短編ミステリー。
「辞めたい」という俳優に、自信を取り戻させた不思議な練習方法。
「斬られ役」の俳優が、なぜかカメラに背を向けて倒れた理由とは。
俳優のマネージャーが「わざと」自動車事故に遭ったのはなぜか。
脚本家に「下手だ」と思われていた俳優を、なぜ南雲は主役に抜擢したのか。
南雲の狙いは何だったのか。彼にはなぜ真実が見えたのかーー。
ISBN: 9784569848532ASIN: 4569848532
作品考察・見どころ
長岡弘樹が描く本作は、芸能界の裏側に潜む人間の業と、演技という名の嘘に隠された真実を冷徹に暴き出す傑作です。最大の魅力は、事件の動機が常に表現者の矜持や葛藤と深く結びついている点にあります。虚構を演じるプロが、なぜ現実で罪を犯し、あるいは救いを求めるのか。その一瞬の心理的隙間を突く鋭い洞察は、読者の胸を鋭く射抜きます。 ベテラン俳優・南雲の佇まいは、さながら闇を照らすスポットライトのようです。彼が解き明かすのは単なるトリックではなく、舞台袖で震える魂の叫びそのものです。演じることへの執念が狂気に変わる瞬間を描く筆致は、著者特有の緊張感に満ちています。幕が下りた後の静寂の中で、人間の持つ深淵な孤独と、再生への希望を同時に目撃することになるでしょう。