本書は、アニメ界の巨星・富野由悠季の六十年に及ぶ足跡を、演出と戯作者という二軸で鮮やかに解体した比類なき批評文学です。単なる解説に留まらず、映像の裏側に潜む作家の業や、物語と科学技術が衝突する地点で生まれる哲学を浮き彫りにしています。富野監督がなぜ映画であることを希求し続けたのか、その孤独な闘争の軌跡が情熱的に綴られています。
特筆すべきは、台詞や画面構成の細部に宿る身体性への洞察です。理屈を超えた生命の躍動を描こうとする富野作品の本質を、著者は膨大な資料から理論的に導き出します。それは虚構に大地と祝祭を取り戻そうとする、一人の芸術家の魂のドキュメントです。読後、あなたの視界にある富野アニメの風景は、より深く、鮮烈な色彩を帯びて変貌するでしょう。