坂井希久子
大阪・新世界のどん詰まりに店を構える「ラーメン味よし」。放蕩親父ゲンコの作るラーメンはえらく不味くて閑古鳥が鳴いている。しっかり者の一人娘センコは頭を抱える日々だ。最近、ぼんやりしているおばあやんも気にかかる。そんなある日、幼馴染の質屋の息子カメヤが東京から帰って来て...。下町商店街に息づく、鬱陶しいけどあったかい、とびっきりの浪速の人情物語。
坂井希久子が描くのは、泥臭くも愛おしい人間の再生です。新世界の店を舞台に、ダメ親父と奮闘する娘が織りなす物語は、血の繋がりや土地への執着という重層的なテーマを突きつけます。不味いラーメンが象徴するままならぬ現実を、笑い飛ばしながら抱きしめる筆致には、現代人が忘れかけている力強い生命力が溢れています。 映像版では大阪の極彩色な街並みが躍動しますが、原作の真骨頂は、文字から漂う油の匂いや孤独の描写にあります。映像のテンポ感と、活字ならではの濃密な心理描写が共鳴し合うことで、物語はより立体的な輝きを放ちます。ページをめくるたびに、読者の心にも通天閣の温かな光が灯る一冊です。
坂井 希久子 は、日本の小説家、官能小説家、エッセイスト。和歌山県和歌山市出身。同志社女子大学学芸学部日本語日本文学科卒業。
実写化・アニメ化された映画やドラマを観て、原作小説ならではの美しい心理描写や、映像化で新たに加えられた解釈・演出との違いを楽しみましょう。
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