あらすじ
東京の救命救急センターで働いていた、62歳の医師・咲和子は、故郷の金沢に戻り「まほろば診療所」で訪問診療医になる。「命を助ける」現場で戦ってきた咲和子にとって、「命を送る」現場は戸惑う事ばかり。老老介護、四肢麻痺のIT社長、6歳の小児癌の少女...現場での様々な涙や喜びを通して咲和子は在宅医療を学んでいく。一方、家庭では、骨折から瞬く間に体調を悪化させ、自宅で死を待つだけとなった父親から「積極的安楽死」を強く望まれる...。
ISBN: 9784344036048ASIN: 4344036042
作品考察・見どころ
現役医師である南杏子氏だからこそ描ける、医療現場の圧倒的なリアリティと慈愛が本作の真骨頂です。救命医療という生を死守する場から、穏やかな終末を支える在宅医療へ。主人公が直面する価値観の転換は、私たちがいかにして最後の一瞬まで自分らしく在るべきかという、普遍的で重厚な問いを突きつけてきます。 冷徹な技術の限界を超えた先にある、患者と家族が織りなす情愛の機微。特に、実父から安楽死を望まれる極限の葛藤を描く筆致は、崇高なまでの静謐さを湛えています。命の終わりを絶望ではなく、人生の集大成としての停車場と捉える著者の温かな眼差しは、読者の死生観を根底から揺さぶり、明日を生きる希望へと変えてくれるはずです。