あらすじ
叔母である川尻松子の惨殺死から四年。松子の甥・川尻笙は、大学は卒業したが就職をすることもなく、将来への不安を抱きながら、東京でその日暮らしの生活を送っていた。しかし偶然知り合ったユリとミックの舞台演劇に対する熱い思いに触れ、笙も芝居の魅力へ強く惹かれていく。一方、自らの夢だった医師への道を着実に歩んでいた笙の元恋人・明日香は、同級生であり恋人の輝樹からプロポーズされ、学生結婚への決意を固め始めていた。だが両者が人生の意味を考えた時、思わぬ出来事が二人の未来を変えていく...。松子の“生”を受け継ぐ二人の青春を爽やかに描き、熱く心を揺さぶる青春小説の大傑作、誕生。
ISBN: 9784344011533ASIN: 4344011538
作品考察・見どころ
山田宗樹が描く本作は、前作『嫌われ松子の一生』という凄絶な悲劇の残照を、再生と希望の光へと転換させた傑作です。叔母・松子の孤独な死を背負った笙が、演劇という虚構の世界で自らの真実を見出していく過程は、血縁を超えて「生の情熱」が受け継がれる瞬間の美しさを鮮烈に描き出しています。 著者は、停滞する若者の焦燥感と、医療という現実に立ち向かう明日香の葛藤を対比させ、人生の黄金の時間とは何かを厳しくも温かく問いかけます。残酷な現実の先にこそ輝きがあるという山田文学の真髄が、舞台の熱気と共に読者の胸を震わせる。本作は、魂の継承を爽やかに謳い上げる、真に切実な青春の叙事詩なのです。

