古川日出男
時は室町、京で世阿弥と人気を二分しながらも、歴史から消された能役者がいた。その名は犬王――窮極の美を求めた異貌の男の物語。
古川日出男の筆致は、琵琶の弦が弾けるような強烈なリズムを刻み、読者を室町という異界へ引きずり込みます。本作の核心は、正史から抹消された異貌の天才・犬王の魂を、文学の力で現代に召還することにあります。呪われた肉体を持つ彼が、芸を磨くことで「異形」を「極致の美」へと昇華させていく過程は、あまりに凄絶で官能的です。 物語は、歴史の影に埋もれ、語られなかった者たちの叫びを、文字という媒体を超えて響かせます。盲目の琵琶法師との共鳴は、芸術が持つ「救済」の本質を突きつけ、読む者の心に消えない火を灯すでしょう。失われたはずの美学が、血の通った神話として蘇る瞬間を、ぜひ全身で体感してください。
古川 日出男 は、日本の小説家、詩人、劇作家。
実写化・アニメ化された映画やドラマを観て、原作小説ならではの美しい心理描写や、映像化で新たに加えられた解釈・演出との違いを楽しみましょう。