あらすじ
このエッセイもまた、公開の日記帳だ。前向きで後ろ向きで、頑張り屋で怠け者で、かしこく浅はか、独特な人物の日々の記録だ(前書きより)--はじめての育児に奮闘し、新しい食べ物に出会い、友人を招いたり、出かけたりーー。そんな日々はコロナによって一転、自粛生活に。閉じこもる中で徐々に気が付く、世の中の理不尽や分断。それぞれの立場でNOを言っていくことの大切さ、声を上げることで確実に変わっていく、世の中の空気。食と料理を通して、2018年から2022年の4年間を記録した、人気作家・柚木麻子のエッセイ集。各章終わりには書下ろしエッセイも収載。
目次
1.うちにおいでよ 2018年1月〜12月
アメリカンダイナー/ご法度/インスタ叩き叩き/母の名言/母にだけ見えている/スーパーマーケット/レギュラー・オープンハウス・システム(前後編)/大人のおやつ/大阪旅行/完全食/地下街/もみの木/モテスクラップ/2018年の後日談(書下ろし)
2.うちの味、外の味 2019年1月〜12月
クラシカルレシピ/誕生日プレゼント(前後編)/アートワーク/公園/ファッションフード/カップ焼きそば/味噌汁/それ(前後編)/メキシコ料理/アイデア/2019年の後日談(書下ろし)
3.そしてコロナがやってきた 2020年1月〜12月
家出(前後編)/おうち居酒屋/非常時/紙芝居/ママに武器なんていらない/ハンドミキサー/自粛明け/アフタヌーンティー/今日もなにもできなかった/誕生日/アップルパイ/記憶に残る店/クリスマス/ライフハック/2020年の後日談(書下ろし)
4.もう、黙らない 2021年4月〜2022年3月
一番の好きな料理はなんですか?/「新しい」こいのぼり/ただいま、勉強中/楽しむ姿を見せることステイホームの工夫疲れ/顔ハメ写真/幸せそうで、何が悪い/徹夜明け/ホッとできない私へ/大人のいい女(前後編)/クリスマスの試食販売/集中できる場所/手巻き寿司/子連れで、恐怖しない世の中を
作品考察・見どころ
柚木麻子の凄みは、日常の食を社会を撃ち抜く刃に変える筆致にあります。本書は単なる育児日記ではありません。個人的な違和感を突き詰めた先に、世界の理不尽や分断が鮮烈に浮かび上がる。その意識の変遷をリアルタイムで辿るプロセスこそが、本作の持つ文学的な真骨頂です。 「とりあえずお湯をわかす」という最低限の営みから始まる静かな抵抗は、読者の心に潜む沈黙を打破する力を与えてくれます。コロナ禍を経て、著者の筆は「もう黙らない」という決意に満ちた連帯の呼びかけへと熱を帯びていく。生活者としての矜持と、不当な圧力にNOを突きつける勇気。本作は、混沌とした現代を生き抜くための、最高に熱いサバイバル・ガイドです。