カルミネ・アバーテが描くのは、単なる郷土料理の記録ではありません。それは南イタリアの過酷な大地に根を張り、海と山の恵みを等しく愛した人々の魂の遍歴です。著者の流麗な筆致は、移民という宿命を背負った者が抱く切ないまでの郷愁とアイデンティティを、一皿の料理の中に鮮烈に昇華させています。
映像化作品では色彩豊かな南イタリアの情景が五感を刺激しますが、原作テキストには文字でしか辿り着けない重層的な「記憶の味」が沈殿しています。映像が外側の美しさを彩るなら、本書は内面の深淵を照らし出す。両者を往還することで、読者は故郷を食すという行為の聖性に触れ、言葉を超えた感動を覚えるはずです。