本作は、失踪者を追う探偵が都市という迷宮で自らの輪郭を失う実存的恐怖を描いた傑作です。安部公房は、記号化された街の描写を通じ、自己が砂のように崩れる現代人の宿命を鋭利に抉り出しました。読者は、主体性が剥奪されるめまいの深淵へと強烈に引きずり込まれるはずです。
映画版では、安部自身の脚本と硬質な映像が融合し、都市の抽象性を視覚的に極限まで高めています。活字が綴る内省的な迷走と、映像が映し出す幾何学的な冷酷さが共鳴し合うことで、自己喪失のテーマはより鮮烈なものとなりました。二つのメディアを往還する時、出口なき迷路の真の恐怖が立ち上がるのです。