あらすじ
「人を好きになる気持ちが分からないんです」
大学一年生の海松子(みるこ)は、対人関係が苦手。
お洒落や恋には興味なし。特技は脳内で他人に(ちょっと失礼な)あだ名をつけることで、口臭から相手が食べたものを当てる能力を磨き中。
友達は、人の髪型や服を真似する「まね師」の萌音(もね)だけ。
人を好きになる気持ちもわからないのに、幼馴染とイケメン社会人から好意を寄せられていて!?
「あんまり群れないから一匹狼系なんだと思ってた」「片井さんておもしろいね」「もし良かったらまた会ってください」「しばらくは彼氏作らないでいて」「順調にやらかしてるね」
ーー「で、あんたはさ、高校卒業と大学入学の間に、いったい何があったの?」
風変わりな女子大学生が主人公で、綿矢りさワールド全開!
周りとうまくやりたいのにやれない主人公の、不器用で愛おしい恋愛未満小説。
【著者プロフィール】
綿矢りさ(わたや・りさ)
1984年京都府生まれ。早稲田大学教育学部卒業。
2001年『インストール』で第38回文藝賞を受賞しデビュー。
2004年『蹴りたい背中』で第130回芥川龍之介賞を受賞。
2012年『かわいそうだね?』で第6回大江健三郎賞を受賞。
2020年『生のみ生のままで』(上・下)で第26回島清恋愛文学賞を受賞。
作品考察・見どころ
綿矢りさが描くのは、世間の「普通」という枠組みから軽やかに、かつ鮮烈に逸脱する魂の肖像です。主人公・海松子の抱える「恋愛感情の不在」は、決して欠落ではなく、彼女という個体が放つ固有の色彩そのもの。鋭敏すぎる感性が捉える独創的な世界観は、読者に既存の価値観を疑わせるほどの強烈なエネルギーに満ちています。 言葉の端々に宿るユーモアと毒、そして他者とのズレを愛おしむような筆致は、まさに綿矢文学の真骨頂です。自己と他者の境界線で揺れ動く彼女の葛藤は、孤独でありながらもどこか誇り高く、読後には自分自身の内側に眠る「名前のない感情」を肯定したくなるはず。こじらせた先にしか見えない景色を、ぜひ全身で体感してください。