安彦良和が描く本作は、SFの枠を超えた人間劇の極致です。オデッサ編では、戦争の濁流で足掻く個人の矜持と、マ・クベの偏執的な美学が激突します。安彦氏の流麗な筆致が、表情の機微から戦士の孤独を鮮烈に描き出し、読者は歴史の目撃者となる高揚感を味わえるでしょう。
映像版が戦闘の躍動を伝えるのに対し、原作は行間に宿る緻密な心理描写と政治的意図を鋭く射抜きます。映像が動の興奮を与えるなら、本書は静寂の中の問いかけで読者を魅了します。幸村誠氏の寄稿も加わった本版は、両メディアを体験することで物語が神話へ昇華される、至高の読書体験を約束します。