森見登美彦氏の筆致が冴え渡る本作は、京都の酷暑と四畳半という閉塞的な空間を舞台に、緻密な構造美と日常の機微を融合させています。無為な時間を浪費する大学生たちの不毛な「今」がいかに愛おしく、守るべき価値があるかを、饒舌な文体で高らかに謳い上げる文学的達成がここにあります。
失われたリモコンを巡る卑近な騒動が、宇宙消滅の危機へと飛躍する滑稽さと緊迫感。その中心で揺れる「私」と明石さんの不器用な距離感は、知的なユーモアによって結晶化されています。青春の混沌を鮮やかに肯定する著者の魔術的な言葉が、読者の知的好奇心を熱く焦がす、正に無上の傑作です。