マイケル・ウォリスが描くのは、単なる牧場の記録ではありません。それは、アメリカという国家が抱くフロンティア・スピリットが、いかにして伝説へと昇華されていったかを探る壮大な鎮魂歌です。101牧場という特異な舞台を通じて、荒々しい開拓時代の終焉と、それをエンターテインメントとして再構築しようとした人々の野心が見事に活写されています。
著者の筆致は、砂埃の匂いや馬の嘶きさえ感じさせるほど情熱的で、読者を一気に激動の時代へと引き込みます。史実という骨組みに人間ドラマという血肉を通わせることで、神話の裏側に隠された泥臭い真実と誇り高い精神を浮かび上がらせる手法は圧巻です。失われゆく野生の輝きを鮮烈に刻みつけた、歴史ノンフィクションの傑作と言えるでしょう。