あらすじ
6月のウィンブルドン。かつては世界ランク11位まで登りつめたベテランのテニス選手ピーター・コルトも、今や119位に転落。パワーと自信を失ったピーターは、この大会を最後に引退を決意していた。一方、テニス界に彗星のごとく現れた美少女リジー・ブラッドベリーは、父親のコーチによって英才教育を受けたエリートで、大会の優勝候補と目されている。ある日、ホテルのフロントがルームナンバーを間違えたことがきっかけで、ふたりは出会い、惹かれ合っていく。自信を失いかけていたピーターもリジーの声援でトーナメントを勝ち進んでいくが...。センターコートを舞台に繰り広げられる、ロマンティック・コメディ。
ISBN: 4789725162ASIN: 4789725162
作品考察・見どころ
アダム・ブルックスが描く本作の真髄は、勝負の世界を舞台に人間の再生と情熱を極めて優美に描き出した点にあります。栄光を知るベテランの衰えと、若き才能が抱える孤独が交錯するウィンブルドンの聖地で、愛が技術を超えた奇跡を起こす。単なる恋愛小説の枠を超え、人生の黄昏時に再び灯る希望の火を、鮮烈な心理描写とともに炙り出しています。 読者は主人公の視点を通じ、肉体の限界と戦いながらも高みを目指すアスリートの孤独な魂に触れることになるでしょう。恋がもたらすのは、単なる活力ではなく、勝利の先にある自己肯定です。テニスのラリーのように軽妙でいて、一打一打に重みがある言葉の数々は、何かを諦めかけている大人の心に深く、熱く響くはずです。