桑原水菜
『赤の神紋』の再演を宣言し、オーギュスト候補にケイの名を出した榛原憂月。ケイがそのことを知ったのは、すべてが動き出した後だった...。響生は榛原の話を断らせようとするが、そこに渡辺奎吾が現れる。ケイのデビュー会見と、プロダクションの決定を伝えるために。目まぐるしい状況の変化に、混乱し、反発を覚えるケイ。しかし、渡辺の一言で、榛原に会うことを決め、成田へと急ぐ。
桑原水菜の筆致は、人間の魂が極限状態で放つ閃光を鮮やかにえぐり出します。本作の核は、単なる演劇界の成功譚ではなく、才能という名の呪縛がいかに人間を狂わせ、高みへと押し上げるかを描く求道的な文学性にあります。他者の情念が渦巻く中で、自己を削りながら本物へと近づこうとする表現者の葛藤は、美しくも残酷な響きを湛えています。 目まぐるしく変化する状況下、一人の表現者が羽化する瞬間の緊張感は、読者の呼吸を止めるほどに烈しいものです。運命の歯車が回り出す時の焦燥感と、逃れられない宿命への覚悟。著者の耽美かつ鋭利な文体は、私たちが日常に隠している生の渇望を激しく揺さぶります。魂の深淵に触れるような、熱情溢れる物語の真髄をぜひ体感してください。
桑原 水菜 は、日本の小説家。千葉県出身。別名義に、多武峰 洸。