あらすじ
結婚した幸吉は、商売にも手腕を発揮し、当時の北海道ではめずらしい本建築の家や店を建てた。北洋商会から独立し、「平出商店」の看板を掲げた、忙しくも輝かしい日々を支えたのは、妻のおさよはじめ、多くの周囲の人々のはたらきだった。やがて、待望の子を授かり、その成長に希望を託す一家だったが...。
ISBN: 4062752166ASIN: 4062752166
作品考察・見どころ
原田康子が描く開拓期の北海道は、登場人物の情熱を増幅させる一つの生命体のように躍動しています。中巻では、商売の成功に沸く幸吉たちの輝かしい日々が綴られますが、その繁栄の裏側に潜む「霧」のような不穏な予感が、読者の心を捉えて離しません。北の大地に根を張ろうとする人々の剥き出しの生命力が、著者の硬質で美しい文体によって見事に結晶化されています。 物語の核心にあるのは、絶頂期にあっても拭い去れない人間の孤独と、愛憎の深層心理です。成功の光が眩しくなるほど、運命の不条理が忍び寄る緊張感は圧巻です。栄華と衰退が隣り合わせであるという真理を、これほどまでに叙情的に描き切った大河小説は他にありません。一族の命運に翻弄されながらも前を向く人間の強靭さに、魂が激しく揺さぶられるはずです。