ブリティッシュ・ナショナル・フィルムズは、1930年代半ばから1940年代後半にかけて、英国映画の黄金期の一翼を担った重要な独立系制作会社です。実業家のレディ・ユールとジョン・コーフィールドによって設立され、当時の英国最大の撮影所の一つであるエルスツリー・スタジオを拠点に、格調高い作品を数多く制作しました。同社の最大の強みは、戦時下の厳しい状況下においても、国民の士気を高める愛国的なテーマと、洗練された芸術性を融合させた高い制作クオリティにあります。
代表作である『ガス燈』(1940年版)は、後のハリウッドリメイク版の影に隠れがちですが、心理サスペンスの先駆的な傑作として批評家から極めて高い評価を受けています。また、レスリー・ハワードが監督・主演を務めた『ピムパーネル・スミス』など、ナチスへの抵抗を描いた知的なスリラーでも成功を収めました。巨大資本に屈しない独立独歩の姿勢で、ドラマ、ミュージカル、戦時プロパガンダと多岐にわたるジャンルを開拓し、英国映画史における「独立系の雄」として揺るぎない地位を確立した名門企業です。