物語の終焉において描かれるのは、武力による制覇ではなく、名もなき者が強き意志を継承する精神の昇華です。武論尊氏の紡ぐ「愛」という深遠なテーマが、原哲夫氏の圧倒的な筆致によって、単なる肉体の衝突を超えた叙事詩へと昇華されています。伝説の幕引きに相応しい、魂の震えを感じずにはいられません。
特に、かつての少年バットが示す自己犠牲は、暴力が支配する荒野に灯る最後の希望であり、神格化されたケンシロウを再び人間へと引き戻す究極の献身です。この最終巻は、世紀末救世主伝説が単なる個人の武勇伝ではなく、次代へ繋ぐ「心の在り方」を問う物語であったことを、鮮烈に証明しています。