あらすじ
ISBN: 9784783710332ASIN: 4783710333
命などどこにでもある
舌にのせれば
叫ぶたびに砕けて増える
死の唇が粉を吹く
その混じり気が好きだった
もうキスはいらない
言い残したことは剝がれて浮き上がり
人肌の水面に散る
後を追う沈み込む寸前の指に
渦がそれを巻き付ける
骨まで届く指輪のサイズはだれも知らない
(「氷? imitation」)
あびてあびて、から、ぎざぎざ、まで、あっぷあっぷ、から、駄駄まで、にぎわしくも透明なシニフィアンが詰まっている。指先がダンスする相手としての、触れそうで触れない、官能という名のシニフィアンが。〈間〉をそのようなものとして捉え、表現したところに、彼女の、紛れもない詩人としての存在証明がある。--野村喜和夫
『あびてあびて』(日本詩人クラブ新人賞)から『駄駄』まで、詩人の達成を全篇収録。男と女。永遠のぎざぎざを攪拌させ、逆流させ、生み落とされる、痛苦とエロスの果実。
解説=佐々木洋一 瀬崎祐 相沢正一郎 大家正志 富永正志
清水恵は、物語の深淵からキャラクターの微細な心の揺れを掬い上げる、現代アニメーション界における至高の言葉の紡ぎ手です。彼女の筆致は、単なるプロットの構築に留まらず、作品世界に温かな血を通わせる静かな情熱に満ちています。キャリアの軌跡を辿れば、原作の魅力を最大限に引き出しつつ、映像表現としての物語性を高める類まれな手腕が一貫して光ります。特に、多様なキャラクターが交錯する群像劇や、言葉にできない感情の機微が問われる繊細なドラマにおいて、彼女の存在感は際立っています。シリーズ構成という重責を担う際も、全体を俯瞰する緻密な構成力と、個々の瞬間に命を吹き込む情緒的な視点の双方を自在に使い分け、視聴者の記憶に深く刻まれるエピソードを幾度も生み出してきました。これまでの実績が示すその歩みは、安定したクオリティを維持しながらも、常に新しい表現へと手を伸ばす誠実な職人魂を物語っています。派手な技巧に頼ることなく、物語の本質を静かに、かつ劇的に描き出すその姿勢こそが、彼女を制作現場において欠かせない信頼の象徴へと昇華させたのです。ジャンルの境界を超えて作品を成功へと導く確かな筆力は、これからも物語の地平を広げ、観る者の魂を揺さぶり続けるに違いありません。