あらすじ
品川の旅籠・紅屋ではたらく料理人・おやすは、女中頭のおしげが紅屋の跡継ぎとして養女に入ると決意したことを喜びつつも、行方知れずの弟の身を案ずるおしげの胸中を思うと、気持ちは複雑だった。 一方、横浜生麦村では薩摩藩士が英国人を殺傷する事件が発生。 品川も騒然とするある日、おやすは浪人風の男に襲われる。 あわやという時、現れた剣の達人に窮地を救われるが、その正体を知っておやすは驚くのだった......。 激動の幕末を迎えてなお、安らぎの場を守ろうと懸命に生きる人々を描く大好評シリーズ第十二弾!
ISBN: 9784758447485ASIN: 4758447489
作品考察・見どころ
本シリーズの真骨頂は、激動の幕末という動乱の歴史と、台所の安らぎを芳醇な料理の香りで繋ぐ筆致にあります。第十二弾の本作では、生麦事件の余波が旅籠に及びますが、柴田よしきはあえて包丁の音や湯気の温もりを克明に描くことで、大きな変革期にあっても揺るがない平穏を守り抜く意志の尊さを、鮮烈に浮かび上がらせています。 時代に翻弄されながらも、誰かのために美味を追求するおやすの姿は、現代を生きる私たちの心に深く響きます。剣の鋭さと料理の優しさが交錯する瞬間、物語は単なる時代小説を超え、至高の人間ドラマへと昇華されます。混迷を極める今だからこそ、温かな食卓が持つ「救いの力」を、ぜひこの物語で体感してください。