あらすじ
ISBN: 9784635048453ASIN: 4635048454
98歳、山小屋をひとりで守る翁が作るおにぎり。標高2307m、雲の上のパン屋さん。苔むす森、リスが訪れる小屋の薪ストーブで焼く厚切りトースト。山と山小屋、ごはんを作る人と食べる人によって紡がれる18の物語を臨場感たっぷりの文章と写真で綴る。2008年に刊行、山の魅力を新しい視点でとらえ、多くの女性を山に誘うきっかけとなった単行本、待望の文庫化。
日本映画の銀幕に奥行きと確かな手触りをもたらす、空間演出の至宝。松本理は、単なる背景の構築に留まらず、そこに生きる人々の体温や時代背景までも描き出す稀有なアートディレクターです。彼のキャリアを紐解けば、名匠たちとの共作を通じて磨き上げられた、揺るぎない審美眼が浮かび上がります。静謐な作家主義的映画から、観客を圧倒する空想特撮、さらには爽快な青春群像劇に至るまで、彼の手がける美術は常に作品の核となってきました。松本の卓越した能力は、徹底したディテールの追求と、フィクションを現実に着地させる圧倒的な説得力にあります。ある時はノスタルジックな情景を慈しむように再現し、またある時は冷徹なまでの機能美で観客を物語の世界へ引き込む。その仕事ぶりは、映像における真実味の基準を常に底上げしてきました。キャリアを重ねるごとに増すその洗練された感性は、ジャンルの境界を軽やかに飛び越え、作品の格を高め続けています。彼が画面に配する一点の道具、一本の線には、映画という魔法への深い敬意が込められています。現場の熱量を静かにコントロールし、監督のビジョンを立体的な感動へと昇華させるその手腕は、次世代の制作者たちにとっても指針となるものです。松本理という名前がクレジットに刻まれるとき、そこには決して揺らぐことのない極上の映像体験が約束されているのです。