井原忠政
茂兵衛の一人娘が祝言を挙げたのも束の間、太閤・秀吉薨去により世は大いに動揺する。続く前田利家逝去、豊臣家武断派による石田三成襲撃を経て、いよいよ家康は天下への野心を隠さなくなった。悪巧みは冴え渡り、こき使われる茂兵衛は東奔西走する。戦国足軽出世物語、天下を窺う最新15巻!
本作の真髄は、歴史の激流を英雄の視点ではなく、泥にまみれ奔走する茂兵衛の皮膚感覚で描き切る現場主義にあります。家康の謀略に翻弄されながらも、家族の幸せと忠義の狭間で戦場を駆ける姿は、戦国の非情さとそこに通う人間味を鮮烈に浮き彫りにしています。 井原忠政氏が描くのは、大局の裏に潜む名もなき者たちの汗と涙の記録です。関ケ原へ向かう緊迫感の中で、あえて仁義という泥臭い絆を軸に据える構成が見事です。一兵卒の視点から描かれる天下の行方は、歴史を体験させる圧倒的な熱量を放ち、読者の心を震わせます。