原田ひ香が描く本作は、家計簿という即物的な記録を、一人の女性が生きた証としての叙事詩へと昇華させた点に文学的な凄みがあります。数字の羅列の合間に記された独白は、時代に翻弄されながらも愛と尊厳を守り抜こうとした魂の叫びであり、読む者の胸を激しく揺さぶります。
失業や孤独に直面する現代の女性が、七十年前の記録を通じて血縁の真実に触れる構成は圧巻です。お金とは生きる手段であると同時に、誰かを想う祈りの集積でもある。受け継がれるのは資産ではなく、困難を生き抜く意志なのだと本作は熱く語りかけ、読者の明日を照らす光となります。