泉ゆたか
ここは、世田谷線上町駅近くにあるみどり助産院。母親たちを出迎えるのは「おっぱい先生」こと律子だ。授乳に悩みを抱える母親たちに、全力で向き合い続ける毎日。母親たちは律子と出会い、子を守り、生きる力を取り戻していく。知られざる「母乳外来」専門の助産院を舞台にした、育児の孤独を打ち破る希望に満ちた物語。シリーズ2か月連続刊行第1弾。(『おっぱい先生』改題)
本作は、単なる育児奮闘記ではありません。生命が誕生する瞬間の神聖さと、それに伴う母親たちの孤独や葛藤を、泉ゆたかは極めて繊細な筆致で描き出しています。助産院という聖域を舞台に、迷える魂が救済されていく過程は、読者の心に灯をともすような温もりに満ちており、一種の人間再生のドラマとしての風格を漂わせています。 特に、律子先生という包容力溢れる存在は、現代社会が失いつつある慈しみの象徴です。言葉の端々に宿る滋養豊かな知恵は、活字を通じて私たちの乾いた心に直接語りかけてきます。母になることの痛みさえも肯定し、それを新しい希望へと昇華させる物語の力強さは、まさに文学にしか成し得ない深い癒やしの体験を約束してくれるでしょう。
泉 ゆたか は、日本の小説家。