あらすじ
漫画家で家庭的な父親ダニエルと、優秀な学者の母親ローラ、そして二人に愛されて育った娘トリクシィ。平凡な一家の穏やかな生活は、ある日突然崩れ去った。14歳のトリクシィがボーイフレンドから暴行を受け、心に深い傷を負ったのだ。世間の冷たい視線にさらされ、彼女の苦しみは頂点に達する。娘をなんとか守ろうとする両親だったが、現実は容赦なかった。事件をきっかけに、一家は思いもよらない真実に次々と直面することとなる。ローラは不貞を告白せざるをえなくなり、一方ダニエルの内部では、遠い昔に葬った荒々しい人格が呼び覚まされる。そして被害者のトリクシィ自身の供述にも、ほころびが生じてくる。三人三様に身にまとっていた偽りがひとつずつ剥がされ、やがて最悪の事態が一家を...。『わたしのなかのあなた』で全米に衝撃を与えた著者による、家族の崩壊と再生の物語。
ISBN: 9784152088130ASIN: 4152088133
作品考察・見どころ
ジョディ・ピコーが描くのは、平穏な日常の裏に潜む「聖域の嘘」です。本作の魅力は、愛ゆえに重ねた偽りが家族の中でいかに凶器へ変貌するかを解剖する鋭利な視点にあります。父が描く漫画の世界と現実が交錯する構成は、読者の善悪の境界線を激しく揺さぶり、物語に重厚な文学的緊張感を与えています。 ダンテの地獄をなぞるように、登場人物たちは己の過去へと降りていきます。守るべき娘の証言すら揺らぐ中、本作は「真実が常に救いになるのか」という倫理的難問を突きつけます。自己犠牲とエゴが混濁する果てに、一家が手にする再生の光とは。魂を激しく震わせる、圧巻の人間ドラマです。