本書は、愛憎渦巻く伏魔殿として語られがちな大奥を、巨大な「職場」として捉え直した画期的な一冊です。永井紗耶子氏は、権力闘争の陰に隠れた末端の女中たちに光を当て、現代にも通じる自立心や葛藤を鮮やかに描き出しました。上様の寵愛という価値観に縛られず、己の職責を全うしようとする彼女たちの姿には、時代を超えた普遍的な矜持が宿っています。
専門的な仕事に誇りを持つヒロインたちの心理描写は圧巻です。閉ざされた空間で、ままならない現実と戦いながら「居場所」を切り拓く彼女たちの情熱は、現代を生きる私たちの心をも熱く揺さぶります。歴史の深淵に埋もれた女性たちの鼓動が、精緻な筆致によって今、鮮烈な輝きを放ちます。