あらすじ
一八九〇年、親善訪日使節団を乗せたオスマン帝国の軍艦エルトゥールル号が、和歌山県串本沖で沈没した。六〇〇名以上が嵐の海に投げ出される未曽有の大惨事。だが地元住人たちの懸命な救助活動により六十九名の命が救われ、母国トルコへの帰還を果たす。時は移って一九八五年。イラン・イラク戦争に伴いフセインはイラン領空の航空機無差別攻撃を宣言。各国は自国民の救出に動くが日本には手立てがない。多くの在留邦人の身に危機が迫っていた―。日本・トルコ友好百二十五周年記念映画を完全ノベライズ。時を隔てた二つの出来事には、深い絆の物語があった。
ISBN: 9784094062366ASIN: 409406236X
映画・ドラマ版との違い・考察
本書は単なる歴史の再現に留まらず、百年の時を超えて共鳴する真心の連鎖を鮮烈に描き出しています。串本の人々が見せた無償の献身が、いかにテヘランで日本人の命を繋いだのか。豊田美加の筆致は、荒れ狂う嵐や戦火の恐怖を刻みながらも、その奥底にある国境を超えた利他精神という人間の至高の輝きを、文学的な深みを持って照らし出しています。 映画版が壮大な映像で訴える一方、本作は登場人物の葛藤や沈黙に秘められた情感を丁寧に掬い上げています。救出劇の裏側にあった覚悟や祈り。テキストならではの濃密な心理描写が、二国が育んできた絆の重みを確かなものとして私たちの胸に刻んでくれるでしょう。






