中澤日菜子氏の筆致が冴え渡る本作の本質は、人生の「再起動」が放つ瑞々しい熱量にあります。単なる高齢者の奮闘記に留まらず、経験を重ねた世代が未知の混沌たる保育現場に飛び込むことで生じる化学反応を、まるで情熱的なサンバのリズムのように躍動感たっぷりに描き出しています。
老いゆえの閉塞感を打ち破るのは、理屈を超えた子供たちの生命力と、それに応えようとする主人公の泥臭いまでの誠実さです。世代間の断絶を「慈しみ」という共通言語で繋ぎ合わせ、人生の後半戦を輝かせるための勇気を授けてくれる本作は、閉塞感を感じている全世代の読者の魂を震わせる至高の人間讃歌といえるでしょう。