あらすじ
お前なら、きっと本を取り戻せるはずだ。
幸崎ナナミは十三歳の中学二年生である。喘息の持病があるため、あちこち遊びに出かけるわけにもいかず学校が終わるとひとりで図書館に足を運ぶ生活を送っている。その図書館で、最近本がなくなっているらしい。館内の探索を始めたナナミは、青白く輝いている書棚の前で、翡翠色の目をした猫と出会う。
なぜ本を燃やすんですか?
「一番怖いのは、心を失うことじゃない。失った時に、誰もそれを教えてくれないこと。誰かを蹴落としたときに、それはダメだと教えてくれる友達がいないこと。つまりひとりぼっちだってこと」
ようこそ、新たな迷宮へ。
【編集担当からのおすすめ情報】
世界40カ国以上で翻訳出版!
奇跡のロングセラー
『本を守ろうとする猫の話』
シリーズ最新作!
『神様のカルテ』著者、
第2のライフワーク!
ISBN: 9784093867108ASIN: 4093867100
作品考察・見どころ
夏川草介氏が描くこの物語は、単なるファンタジーの枠を超え、現代社会が抱える「心の欠落」を鋭く射抜く精神の冒険譚です。本が消失していくという異常事態を通じ、私たちが効率や利便性の陰で何を切り捨ててきたのかを静かに、しかし情熱的に問いかけます。翡翠の目を持つ猫との邂逅は、自己の内面と向き合うための鏡であり、静謐な文体の中に潜む言葉の強靭さが、読む者の魂を深い思索へと誘います。 特筆すべきは、喘息を抱える少女ナナミの孤独と勇気です。物理的な自由を制限された彼女が、書物という無限の知性と情愛を守るために立ち上がる姿は、他者との繋がりを失いかけた現代人への至高の福音と言えるでしょう。誰かを蹴落とすことが常態化した世界で、独りぼっちにならないための「心の羅針盤」を提示する本作は、本を愛する全ての人々に贈られた切実な再生の物語なのです。