長崎尚志が描くのは、単なる謎解きではありません。七十年の時を経て露わになった白骨死体という「過去からの遺言」を、圧倒的な熱量で現代へ接続させます。戦後史の暗部と個人の宿命が絡み合う構成は、読者を広島の記憶の深淵へと引きずり込み、歴史の濁流に消えた人々の吐息を鮮烈に蘇らせます。
本作の真の魅力は、消し去れぬ業に向き合う人間の執念にあります。一地方の悲劇が世界へと波及するダイナミズムは、著者ならではの卓越した構想力の賜物です。静かに、しかし激しく吹き続ける風のように、真実を求める魂の叫びが読者の胸を打ち抜く、至高の歴史ミステリーの誕生です。