あらすじ
ISBN: 9784088940328ASIN: 4088940326
「月光王」と呼ばれるシャリバルテ王国の若き王は、隣国への侵略戦争を始め、海沿いの王国ペアンの幼い王女オルガを妃にする。王の無礼な振る舞いに苛立つオルガであったが、彼の不器用な優しさにふれ、次第に二人は心を通わせていく。王が犯した罪、オルガの秘密、王の異母弟マグレブの誓い。残酷な運命が三人を翻弄する。
そして時は流れ、正気を失った王妃のもとに双子の男児が生まれる。その名はアーダルテとアードルテ。
静謐な余白と艶やかな曲線美を操り、紙の上に映画的な時間軸を現出させる稀代の表現者、それが中村明日美子です。彼女の描く物語は、単なるコミックの領域を超え、観る者の視覚野に強烈なリズムを刻み込みます。二〇〇〇年代初頭の鮮烈なデビュー以降、耽美なエロスと純真な叙情、さらには背筋を凍らせるようなダークファンタジーまでを自在に往来するその作家性は、多くの映像制作者を刺激し続けてきました。代表作が劇場アニメーションとして結実した際、彼女の筆致が持つ官能的なまでの静止と流麗な動感は、映像表現としても極めて高い純度で成立することを証明しました。キャリアの変遷を辿れば、ジャンルの枠に囚われず、常に人間の心の深淵を鋭利な感性で掬い上げてきたことが分かります。特定のカテゴリーに留まらぬその多才さは、実写やアニメーションといったメディアの垣根を越え、現代の映像文化における重要なインスピレーションの源泉となりました。彼女が生み出す一線一線には、演者の吐息や光の粒子を想起させる圧倒的な説得力が宿っています。中村明日美子が紡ぐ世界は、これからも形式を変えながら、映画的な魔法を纏って私たちの魂を震わせ続けるに違いありません。