第36巻は、もはや善悪の境界すら無に帰す究極の「執念の叙事詩」です。鏡貴也氏が描くこの残酷な世界の本質は、滅びゆく中で「人間を人間たらしめるのは何か」という悲痛な問いにあります。山本ヤマト氏の緻密な描線が、フェリドの狂気とグレンの苦悩、そして崩れゆく希望の断片を、文学的な芳醇さをもって鮮烈に描き出しています。
アニメ版が躍動感で物語を彩ったのに対し、原作の真髄は行間に漂う「沈黙の重み」にあります。映像で描ききれない重厚な内面描写が読者の心に深く突き刺さり、一ノ瀬グレンの苦衷や優一郎の覚悟に生々しい実存感を与えます。メディアを越えて深まるこのシナジーこそ、本作を追い続ける者だけが味わえる至高の知的興奮といえるでしょう。