あらすじ
【第26回島清恋愛文学賞受賞作】
「どんな場所も、あなたといれば日向だ」
互いに男の恋人がいるのに、止めようもなく惹かれあう逢衣(あい)と彩夏(さいか)。
女性同士、心と身体のおもむくままに求め合い、二人は一緒に暮らし始めた。芸能活動をしていた彩夏の人気に火が付き、仕事も恋も順調に回り始めた矢先、思わぬ試練が彼女たちを襲う。切ない決断を迫られ、二人が選んだ道は……。
今まで裸でいても、私は全然裸じゃなかった。常識も世間体も意識から鮮やかに取り払い、一糸纏わぬ姿で抱き合えば、こんなにも身体が軽いーー。
女性同士のひたむきで情熱的な恋を描いた、綿矢りさの衝撃作!
【著者プロフィール】
綿矢りさ(わたや・りさ)
1984年京都府生まれ。早稲田大学教育学部卒業。2001年『インストール』で第38回文藝賞を受賞しデビュー。2004年『蹴りたい背中』で第130回芥川賞を受賞。2012年『かわいそうだね?』で第6回大江健三郎賞を受賞。
ISBN: 9784087443967ASIN: 4087443965
作品考察・見どころ
綿矢りさの新境地とも言える本作は、既存の恋愛小説の枠組みを軽々と飛び越え、剥き出しの生が火花を散らすような熱量に満ちています。下巻では、社会的な規範や自己保身を脱ぎ捨て、相手の魂そのものに手を伸ばそうとする二人の女性の渇望が、痛切なまでの筆致で描かれます。美しくも残酷な言葉の連なりは、読者の五感を震わせずにはいられません。 特筆すべきは、性別という属性を無効化するほどの「個」への執着です。理屈をなぎ倒して進む彼女たちの姿は、平穏な日常に埋没した私たちの心を激しく揺さぶり、人を愛することの根源的な恐ろしさと悦びを突きつけます。ページを捲るたび、真に「生きる」ことの眩しさに魂が侵食されていく、至高の読書体験がここにあります。