古舘春一先生が描く魂の震えを、吉成郁子先生の筆致が緻密な心理描写へと昇華させた本作の真髄は、単なる勝敗を超えた執着の美学にあります。絶対的な個の力に抗うため、泥臭く思考を巡らせる凡人たちのあがきが、一編の叙事詩のような気高さを放っています。
特に冷静沈着な月島が見せる静かなる覚醒は、理性の檻を突き破る一瞬の情熱を鮮烈に描き出し、読者の胸を熱く焦がします。テキストに宿る緻密な熱量がコート上の緊張感を五感に直接訴えかけ、一度読み始めれば、高鳴る鼓動と共にまだ見ぬ頂の景色へと強烈に引き込まれることでしょう。