あらすじ
ISBN: 9784065401866ASIN: 4065401860
まっ白な雪にとざされて、長い冬眠に入る前のムーミン谷の十一月。人恋しくなり、ムーミンやしきに集まってきたスナフキン、ホムサ、フィリフヨンカ、ヘムレンさん、スクルッタおじさんに、ミムラねえさん。
ところが、ムーミン一家は旅に出ていて留守なのです。
不本意ながらもおかしな共同生活をはじめる6人でしたが……。
この『ムーミン谷の十一月(原題 SENT I NOVEMBER)』は、9冊あるムーミン小説の最後のお話です。
講談社文庫では、1978年からムーミンの物語をご紹介してきました。
本書は、2025年ムーミン小説誕生80周年記念として、2020年の改訂版テキストにあらためた[新版]です。
トーベの手になる美しい挿絵とともに、ムーミン谷の物語をお楽しみください。
《収録》
解説……鈴木徹郎
ムーミン谷の魅力 8『ムーミン谷の十一月』からっぽのムーミン谷にひびく、六つの音色……冨原 眞弓
*中学生以上漢字にふりがな
*この本は『ムーミン全集[新版]8 ムーミン谷の十一月』(2020年講談社刊)の文字づかい等を改めたものです。

北欧の冷たい海と孤独、そして慈愛を物語へと昇華させたトーベ・ヤンソンは、単なる児童文学作家の枠を超え、現代の映像文化に深遠な哲学を刻み続ける稀有なクリエイターです。ヘルシンキの芸術家一家に生まれ、戦火の影が色濃い時代にムーミンという避難所を築き上げた彼女の歩みは、常に個人の自由と多様性への讃歌に満ちていました。彼女の筆致は極めて視覚的であり、風景そのものが感情を語るような映画的な叙述が特徴です。初期の風刺画やコミックから後年の大人向けの小説に至るまで、その作品群は世代や国境を越え、幾度となくアニメーションや映画へと形を変えてきました。それらの映像作品に通底するのは、彼女が愛した孤独を愛でる勇気と、不完全な者たちが織りなす優しい共同体の姿です。キャリアを通じて築かれたその物語世界は、視覚効果や技術が進化し続ける映画界においても決して色あせることはありません。統計的な成功を遥かに凌駕する彼女の真価は、観る者の心に静かな灯をともし、人生の不確実性を受け入れる知恵を与えてくれる点にあります。彼女が遺した言葉の断片は、今もなお世界中の映像作家たちに多大なインスピレーションを与え、物語が持つ真の癒やしの力を証明し続けています。