山田洋次監督の温かな視点と、小路幸也氏の情緒豊かな筆致。この二人が共鳴して生まれた本作は、家族という「近くて遠い」存在の機微を鮮やかに描き出しています。日常に埋没しがちな主婦の献身に光を当て、当然だと思っていた平穏がいかに脆く、かつ尊いものであるかを問いかける、鋭い文学的深みがあります。
映像版が放つ喜劇のテンポに対し、小説版は登場人物たちの「声にならない溜息」や秘めた情熱を、テキストならではの密度で補完しています。笑いの中に潜む切実な愛を文字で追体験できる点に、ノベライズの真髄があるのです。両メディアを行き来することで、家族の肖像はより立体的に、薔薇のように色鮮やかに輝き出すことでしょう。