あらすじ
95年、渋谷。時代に抗うように、街を駆け抜けた、17歳の少年たちがいた。2015年の年末、37歳となった秋久のもとに母校の女子高生から連絡が届く。卒業制作のテーマとして「1995年」について調べているという。彼女と会った秋久は、自分の人生を変えたその年のことを語り始めた―。95年3月20日、地下鉄サリン事件が起きた。平凡な高校生だった秋久は、人の死に直面し動揺するなか、縁のなかった4人の同級生から渋谷のカフェに呼び出される。強制的に仲間入りさせられた秋久だったが、彼らとセンター街を闊歩し、刺激的な毎日を過ごすようになる。世界が劇的に変わるのを実感していた。だがある日、リーダー的存在だった翔が何者かに襲撃される。秋久は復讐を誓い、真犯人を捜すため行動に出るが...。
ISBN: 9784041019979ASIN: 4041019974
映画・ドラマ版との違い・考察
早見和真が描く本作は、単なる青春群像劇の枠を超え、一九九五年という「終わりの始まり」を体感した者たちの魂の叫びを刻んだ文学的野心作です。地下鉄サリン事件という暴力的な不条理を前に、若者たちが渋谷というカオスの中で自らの存在を証明しようともがく姿は、読む者の胸を熱く焦がします。言葉の端々から漂う焦燥感と、一瞬の輝きを永遠に閉じ込めようとする筆致こそが、この物語の本質的な魅力と言えるでしょう。 映像化作品では当時の渋谷の色彩や熱量が視覚的に補完され、強烈なノスタルジーを喚起しますが、原作はそれ以上に登場人物の内面へ深く潜り込みます。テキストならではの密度で語られる大人への静かな絶望と、それに対抗する無謀なまでの情熱は、映像を観た後でも鮮烈な印象を残すはずです。文字でしか味わえない彼らの息遣いと、時代のうねりを全身で受け止める覚悟を、ぜひこの一冊で目撃してください。