あらすじ
ある晩、終電に乗り遅れた大学生の山音麦(菅田将暉)と八谷絹(有村架純)は、東京・京王線の明大前駅で偶然出会う。お互いに映画や音楽の趣味がよく似ていたこともあり、瞬く間に恋に落ちた二人は大学卒業後、フリーターとして働きながら同居を始める。ずっと一緒にいたいと願う麦と絹は、今の生活を維持することを目標に、就職活動を続ける。
作品考察・見どころ
本作の真髄は、共通の感性という魔法が生活という現実に摩耗していく過程を、残酷なまでに美しく切り取った点にあります。菅田将暉と有村架純が体現する、親密な幸福から決定的な心のズレが生じるまでの静かな演技は圧巻です。何者かになろうとした若者が社会に飲み込まれ、個性を削ぎ落としていく痛みは、観る者の魂を激しく揺さぶります。
物語を彩る固有名詞や揃いのスニーカーは、純粋だった時間の墓標のように機能し、切なさを増幅させます。恋の終焉を失敗ではなく、人生を彩った花束として肯定するメッセージは、すべての大人たちへの鎮魂歌です。映像でしか捉えきれない微細な視線の揺らぎに、忘れていたはずの記憶が鮮烈に蘇る、珠玉の傑作といえるでしょう。
映画化された原作や関連書籍を読んで、映像との違いや独自の世界観を楽しみましょう。