あらすじ
カメラマンのイシダは、海岸でヌードモデルの撮影中、金髪の謎の老紳士オオミヤに出会い、その妻サダの狂おしくも妖しい美しさに心奪われてしまう。燃えるような緋色の長襦袢に、したたる漆黒の洗い髪で恨みがましく見つめるサダの視線に射すくめられたイシダは、オオミヤに頼まれたサダの撮影すら忘れて、彼女の開いた下肢の間に倒れこんでいく。激しく貪りあうサダとイシダ、二人の愛の情念。それはやがて時空を超え、226事件で世間が騒然としている昭和初期の東京へと向う。
作品考察・見どころ
杉本彩が放つ圧倒的な官能性と、狂気すら孕んだ純愛の深淵。本作は、定という希代の情念を、単なる欲情に留めず、魂の救済を求める究極の愛へと昇華させています。映像美に彩られた刹那の悦楽の裏に、愛する者を独占したいという根源的渇望が鋭く描かれ、観る者の倫理観を激しく揺さぶります。
江守徹ら実力派が脇を固め、退廃的な時代の空気感を重厚に構築しています。肉体の繋がりを超えた先にある、生と死が表裏一体となった情愛の極致。それは単なる事件の再現ではなく、一人の女性が命を燃やし尽くす過程を鮮烈に捉えた、美しくも残酷な芸術的叙事詩と言えるでしょう。