ロバートソン・ヘアとアルフレッド・ドレイトンの黄金コンビが放つ阿吽の呼吸こそが本作の白眉です。保身に走る小心者と尊大な男の対照的な掛け合いは、まさに洗練された職人芸の極致。イザベル・ジーンズの華やかさが加わることで、ドタバタ劇の中に一抹の気品と鋭い緊張感がもたらされ、観る者を一瞬たりとも飽きさせません。
本作の真髄は、人間の虚栄心や過去の過ちを鋭く突く洞察にあります。優雅な日常が音を立てて崩壊し、狼狽が露呈する瞬間に宿る人間の滑稽さと愛らしさは、今なお色褪せない魅力を放っています。俳優たちの卓越した身体表現が映像ならではの躍動感を生み、クラシック喜劇の持つ濃密な多幸感を存分に堪能できる珠玉の一本です。