戦後イギリスの日常を舞台に、洗練されたウィットと滑稽な人間模様を鮮やかに描き出した一級のコメディです。何よりも特筆すべきは、ジョーン・グリーンウッドの唯一無二の存在感でしょう。彼女のハスキーで魅惑的な声と、冷笑的でありながらも愛らしい演技は作品に深い艶を与えています。登場人物たちが織りなす絶妙な会話の応酬は、まるで優雅なダンスのように観客を魅了して止みません。
本作の真髄は、限られた空間での共同生活が引き起こす、滑稽なまでの心理的摩擦をあぶり出した演出にあります。プライバシーの境界が揺らぐ中で露呈する、嫉妬や誤解といった普遍的な感情をこれほど軽妙に昇華させた手腕は見事です。文明的な振る舞いの裏側に潜む人間臭い本音を、洗練された映像美と共に愉しめる、大人のための極上のロマンチック・コメディと言えるでしょう。