あらすじ
『みだれ髪』の中にこんな歌がある。373番「病みませるうなじに繊(ほそ)きかひな捲きて熱にかはける御口(みくち)を吸はむ」。この歌を目にする時、私はいつもウルトラセブン最終話『史上最大の侵略』を想い出す。 長い間地球を守ってきたモロボシ・ダン=ウルトラセブンの肉体は限界に来ていた。身体は動かなくなり、ウルトラ警備隊員として重大なミスを繰り返し、ついには病魔のために生死の境を彷徨する。苦しみにのたうち回るダンを医師でもあるアンヌ隊員が見守るが、意識が回復した一瞬の隙をついてダンは基地を逃げ出す。精密検査をされて自分が宇宙人であることを知られることを恐れたのであった。 そんな時、地球侵略を図るゴース星人は地球防衛の盲点だった地底にミサイルを配備し、さらにアマギ隊員を人質に捉えて人類を脅迫する。「地球防衛軍に告ぐ。地球防衛軍は直ちに我々ゴース星人に降伏せよ。地球人は空と海の守りは堅いが、地底は全くの無防備だ。降伏に従わない場合、世界各国の主要都市を攻撃し、30億人類の皆殺し作戦を実行する」。人類の選択肢は二つ。ゴース星人に降伏するか、それとも人類の誇りとともに滅亡を選ぶか。 ダンはついに決意する。アマギを救うため、二度と立ち上がることができなくなることを覚悟してセブンに変身、最後の戦いに挑んでいく・・・。 私は思う。「あなたのうなじに私の腕を絡めて、キスをして、熱と苦しみを吸い取ってあげたい・・・」。冒頭の短歌はダンに対するアンヌの思いそのものではないかと。 大学の文学の授業でこんな解釈を述べたらきっと周りからは袋だたきにあうことでしょう。それでもいいのです。短歌は自由に、好きに解釈すればいいのです。 そんな覚悟をすると『みだれ髪』の世界は驚くほど拡がり、堅苦しい文学評論の世界とは別の、楽しすぎる短歌の世界の扉が開いてくれます。さあ、本書をきっかけにして、一人一人の読者の皆様には、おもいおもいの新しい短歌世界へ入って行って欲しいと願っています。