馳星周
"人の心を理解し、人に寄り添ってくれる。こんな動物は他にはいない。"-- 「老人と犬」より
馳星周が描いてきた人間の業への冷徹な眼差しが、一匹の犬を媒介に、比類なき救済の物語へと昇華されています。犬の多聞は、震災後の混迷を生きる人々の孤独を映し出す静謐な鏡です。言葉を持たない彼が寄り添うことで、傷ついた魂が剥き出しになり、生への渇望が浮かび上がる構成は、ノワール作家としての真骨頂と言えるでしょう。 本書の本質は、動物との絆を越えた魂の彷徨にあります。過酷な運命を背負い、目的地を目指す犬の揺るぎない意志は、打算にまみれた人間社会の対極にある聖性すら感じさせます。絶望の淵でしか見えない至高の光を、著者はこの旅路を通して鮮烈に描き切りました。読後の震えるような感動は、貴方の人生観を根底から揺さぶるはずです。
馳 星周 は、日本の小説家。本名は坂東 齢人。ペンネームの馳星周は本人がファンである映画監督・俳優の周星馳(チャウ・シンチー、しゅう・せいち)の名前を逆にしたもの。日本推理作家協会、日本冒険作家クラブ会員。
実写化・アニメ化された映画やドラマを観て、原作小説ならではの美しい心理描写や、映像化で新たに加えられた解釈・演出との違いを楽しみましょう。