乃南アサ
入院した祖母を元気づけるため、32歳になった杉山未來は祖母の生地である台湾の古都、台南を訪れる。優しくてなぜか懐かしい国。そこで未來は戦前の日本人の涙と無念を知り、台湾人を襲った悲劇に驚く。そしてようやくたどり着いた祖母の生家は、地獄の家へと変わり果てていた。「わたしは誰も愛さないなんて生き方はしたくない!」そのとき未來が下した人生の決断とは―。
乃南アサが描くのは、郷愁に留まらない魂の再生物語です。台南の眩い光の中で主人公が直面するのは、歴史に飲み込まれた人々の無念と、それでも消えない生の営み。緻密な描写は読者の五感を揺さぶり、異国の湿度や匂い、血の通った人間の温もりを鮮明に伝えてくれます。 本作の真骨頂は、凄惨な記憶を現代の決意へと昇華させる力強さにあります。「愛することを諦めない」という覚悟は、断絶された時間を繋ぐ一筋の光のようです。過去と向き合うことで得られる強靱な希望は、今を生きる私たちの背中を熱く押してくれるでしょう。
乃南 アサ は、日本の小説家。