本作は、実在の猟奇事件をモチーフに、人間の深淵に潜む絶対的な悪の正体を冷徹に暴き出した衝撃作です。曽野綾子氏は、嘘という虚構で女たちを支配する男の病理を描きながら、同時に彼らを救済し得ない社会の空虚さを鋭く突いています。単なる犯罪小説の枠を超え、神の沈黙と人間の業が激しくぶつかり合う様は、読む者の魂を激しく揺さぶるでしょう。
清冽な朝顔の色彩に象徴される天上の青というイメージと、凄惨な殺意の対比が実に見事です。徹底して自己中心的な殺人者の内面は、鏡のように現代人の孤独をも照らし出します。救いようのない絶望の果てにこそ、真の生への問いが浮かび上がることを教えてくれる、著者の文学的真髄が詰まった、まさに震えるような名篇です。