本作は、刻々と流れる時間の残酷さと、それを包み込む慈愛を見事に結晶化させた連作です。ねこまき氏の柔らかな描線は、老いという主題を悲劇ではなく、四季の移ろいの一部として優しく昇華させています。猫のタマと大吉じいちゃんの間に漂う、言葉を必要としない魂の交流は、失われゆく島の原風景と重なり合い、私たちの孤独を静かに癒やしてくれます。
実写版が岩合光昭氏のカメラを通して「生命の輝き」を具現化したのに対し、原作の真髄は紙幅の余白に宿る情緒にあります。漫画ならではの間と内省的な独白が、映像では表現しきれない老いの深淵と愛おしさを描き出します。視覚的な美しさを誇る映像版と、心の機微を綴る原作を併せて味わうことで、何気ない日常がかけがえのない宝物へと変わる至福の体験を味わえるはずです。