桑原水菜
「おまえの才能を監禁する」天才・榛原憂月に翻弄される響生は、榛原を自分の支配下に置こうとする。企ては無残に破れ、絶望の淵に落ちた響生。そんな時新人作家だった自分を見出してくれた恩師の死に出会い、響生の心はケイに向かう。ケイの母の従妹に会った響生は、美しかったというケイの母とケイの濃密すぎる関係を知らされ、衝撃を隠せない。一方、ケイも過去の呪縛に苦しみ...。
桑原水菜が描く本作は、才能という呪いと執着が渦巻く極限の人間ドラマです。本作の核となるのは、天才によって魂を浸食される苦悦と、他者を支配しようとする愛憎の相克です。美しさと残酷さが同居する流麗な文体は、読者の理性を奪い、表現者たちが堕ちていく狂気の深淵を鮮烈に描き出しています。 特に血脈に刻まれた母との禁忌が明かされる場面は圧巻です。愛の形が変容し、血の宿命が魂と共鳴する様は、単なる物語を超えた文学的探求に満ちています。魂を削り合う者たちの交感は、心に消えない傷痕を残すでしょう。