スペイン・ドラマ史に燦然と輝く本作は、権力と欲望、伝統が軋みを上げる変革期の空気感を見事に描き出しています。石造りの重厚な街並みや霧深い風景が醸し出す映像美は、逃れられない宿命を象徴する静かな主役として機能しており、画面から漂う湿り気のある緊張感こそが本作の真骨頂といえます。
エウセビオ・ポンセラら名優たちが繰り広げる心理戦は圧巻。没落する貴族の誇りと新興勢力の野心がぶつかり合う様を、抑制の効いた演技で体現しています。沈黙さえも饒舌に物語る彼らの佇まいは映像表現の極致であり、人間心理の深淵を覗き込むような耽美な体験を約束してくれます。